コント「喫茶店」

「喫茶店

 

客1

客2 

店員 

 

茶店

落ち着いた雰囲気が流れている。

 

間。

 

客1 「し、だよね。し……白いカイ、ト!」

客2 「と、友達がいるの、さ!」

客1 「365 歩のマーチ」

客2 「チー……ヨコレイトディスコ!」

客1 「えー……、まあいいか。氷の世界」

客2 「い、い、い、い……」

 

店員、二人のところへやって来て、

 

店員  「(客2の「い」に被らせるように)いらっしゃいませ」

 

言いながら、水の入ったグラスを置く。

二人、会釈。

 

店員 「ご注文はお決まりですか?」

客2 「ブレンドでいい?」

客1 「うん」

客2 「ブレンド二つで」

店員 「かしこまりました」

 

店員、去らずにその場に立ち続けている。

 

客2 「(店員を気にしながら)い……イパネマの娘

客1  「それ J-POP じゃないじゃん」

客2 「え、なんだっけこれ」

客1 「えー(と)」

 

間。

 

店員 「……ボサノバです」

 

間。

 

客2 「ああ……」

客1と客2、店員を見ている。

 

間。

 

しゃしゃり出た店員、会釈して去る。

 

間。

 

客2 「……(店員の去った方を見ている)」

客1 「はやく! い! い!」

客2 「え? ああ」

客2 「いー、いちょう並木のセレナーデ」

客1 「おおおー、で、で、でん、でん……」

客1 「あ、電(でん)話してこなきゃ」

客2 「あ、そう」

客1 「これ置いてくから、俺だと思って続けてて」

客2 「うん」

 

客1、任意の何かを自分の代わりに置いて退場。

客1と客2のしりとりは続く

 

以降、括弧内の客1の台詞は読まれないので客1の声は観客には聞こえていない。

観客には客2が一人でしゃべっているように見えている。

 

客1 (「伝説の少女」)

客2 「じょ? よ?」

客1 (「よ、で」)

客2 「あ、よ、ね。えー、夜空ノムコウ

客1 (「うっせえわ」)

客2 「ワンダーフォーゲル

客1 (「瑠璃色の地球」)

客2 「う、ultra sou、る!」

 

客2、「る」攻めをしている。

 

客1 (「Lucy in the Sky with Diamonds」)

客2 「おー!……え、いやいやいや、それ全然ビートルズじゃん」

 

めっちゃ二人でうける。

 

客1 (「ループスライダー」)

客2 「うわ! 真心でしょ!うわー! だ、ね……あ、誰かがbedで眠って、る!」

客1(「ルビーの指環」)

客2「私がオバさんになっても」

客1(「もしもピアノが弾けたなら」)

客2「Love so sweet」

客1(「東京ブギウギ」)

客2「ギンギラギンにさりげなく」

客1(「暗闇坂むささび変化」)

客2「元気を出して」

客1(「ディスコの神様)

客2「えー……て、でしょ……まあいいか。守ってあげたい」

客1(「恋しさと せつなさと 心強さと」)

客2「お-! と、と、と……あ、トイレ行ってくる」

客1「(あ、うん)」

客2「これで続けてて」

 

客2、任意の何かを自分の代わりに置いて退場。

 

客1と客2のしりとりは続く。

以降、括弧内の客1と客2の台詞は読まれないので二人の声は観客には聞こえていない。

観客には誰もいない舞台が見えている。

 

客2 (「ど、でもいい?」)

客1 (「(まあ、うん」)

客2 (「どぉなっちゃってんだよ。岡村ちゃん言いたかった」)

客1 (「夜明けの BEAT」)

 

店員、注文されたブレンドを持ってやってくる。

が、誰もいない。

店員、ブレンドをテーブルに置かずに立ったままでいる。

観客には二人がいなくなって店員が困ってしまっているようにも見える。

が、店員は二人のしりとりのゆくえを目で追っている。

 

客2 (「東京」)

客1 (「運命の人」)

客2 (「東京」)

客1 (「いや、今言ったじゃん」)

客2 (「いや、さっきのはくるり、これはサニーデイ」)

客1 (「そっか……あ、ウェカピポ!」)

客2 (「ウェカピポ(笑)ほ、にする。蛍」)

客1 (「えー、ルージュの伝言」)

店員 「あ!!!!!  ん!!!!!」

 

店員、ドン!といきおいよくコーヒーカップをふたつテーブルに置く。

 

店員、「あのひとのママに会うために今ひとり列車に乗ったの/たそがれせまる街並みや車の流れ/横目で追い越して」のメロディをハミングしながら退場。

 

舞台上には誰もいない。

 

二人はコーヒーを飲んでおしゃべりに夢中。